オーケストラ曲は長くなければならない?
作品の規模と演奏時間は、必ずしも一致しません。多数の楽器を使用するからといって、長い作品である必要はありません。
オーケストラには、弦楽器、木管楽器、金管楽器、打楽器など、異なる音色を持つ楽器があります。短い時間の中でも、一つの音色から別の音色へ移ったり、独奏から全体の響きへ広がったりすることで、大きな変化を作ることができます。
むしろ短い作品では、一つ一つの変化が作品全体に占める割合が大きくなります。2分だからできるオーケストラの使い方もあるのです。
「短い」と「未完成」は違う
短い作品について考えるとき、重要なのは演奏時間そのものではなく、音楽がどこまで進んだかです。
たとえば、ある旋律が現れ、少し変化し、別の音色へ渡され、最後に戻ってくる。それだけでも、その流れに必然性があれば一つの作品になります。
反対に、時間だけを長くしても、音楽的な内容がそれに伴わなければ、作品がより充実するとは限りません。
私は作曲するとき、最初から「何分の曲にしよう」と決めることはあまりありません。最初に現れた着想から次の着想が生まれ、音楽の形が少しずつ見えてきます。
そして、最初の着想が十分に広がり、音楽全体の流れに納得できたところが、その作品の長さになります。その結果として、短い作品になることがあります。
短いからこそ、ひとつの着想がよく見える
短い作品では、多くの主題や出来事を詰め込む必要はありません。
一つのリズム
一つの響き
一つの楽器の音色
あるいは、ふと浮かんだ一つの情景
そうした小さな着想が、そのまま作品全体の中心になることがあります。
作品が長くなるにつれて最初の着想から遠くへ進んでいくこともできますが、短い作品では、最初に生まれたものの姿を比較的はっきり残したまま、一つの音楽として完結させることができます。
演奏会の中で、短い作品をどう使うか
短いオーケストラ曲には、演奏時間の長い作品とは異なるプログラミング上の可能性があります。
もっとも分かりやすいのは、演奏会のオープニングです。最初に2〜3分の作品を置くことで、長い時間を使わずに、その演奏会独自の始まりを作ることができます。その後に交響曲や協奏曲が予定されていても、プログラム全体を大きく延長せずに一作品を加えられます。
反対に、アンコールとして使うこともできます。本編とは少し違った性格の短い作品を最後に置けば、演奏会にもう一つの表情を加えることができます。
長い作品の前に置く
プログラムの転換点として置く
複数の短い作品を組み合わせる
オーケストラの各楽器を紹介するプログラムに使う
短いことは、単に「演奏時間が少ない」ということではありません。プログラムの中で置く場所を考えやすいこと自体が、短い作品の特徴でもあります。
編成も、選曲するときの重要な条件
ただし、短ければ簡単に演奏会へ加えられるとは限りません。そこで重要になるのが楽器編成です。
たとえば2分の作品であっても、そのためだけに多数の追加奏者や特殊楽器が必要になれば、演奏する側の負担は大きくなります。反対に、その日の他作品と近い編成で演奏できる短い作品なら、プログラムへ組み込める可能性は高くなります。
演奏時間
楽器編成
演奏難易度
リハーサルに必要な時間
総譜・パート譜の入手方法
事前に音源を確認できるか
楽器編成については、「二管編成のオーケストラとは? 楽器編成と響きの特徴」でも詳しく紹介しています。
短い作品を複数組み合わせる
さらに、短い作品が複数あれば、一曲だけとは違った可能性が生まれます。
同じ作曲家による短編作品をいくつか続けてもよいでしょうし、異なる作曲家の作品を組み合わせることもできます。一つの大きな作品によって時間を構成するのではなく、短い作品の連続によって一つのプログラムを作ることもできます。
短編作品が増えるほど、この可能性は広がっていきます。
Example
《あさひ》――約2分8秒のオーケストラ作品
私が作曲した《あさひ(Sunrise)》は、約2分8秒のオーケストラ作品です。二管編成を基本とし、前奏 ― A ― B ― A ― 後奏という簡潔な形を持っています。
曲の中では、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットへと音楽が受け渡され、それぞれの音色が短い時間の中で現れます。
作品の長さを最初から2分程度に決めて作ったのではありません。作曲とオーケストレーションを進め、その音楽に必要な流れができた結果、この長さになりました。
したがって《あさひ》は、長い作品から一部分を切り取ったものでも、より大きな作品の序曲でもありません。約2分8秒で、一つの作品として完結しています。
▶ 《あさひ》を試聴試聴 — 35秒